宿泊は、豊島エスポワールパーク。ガイドは、発起人の三好洋子・岩下洋子、そして豊島在住の旅行会社 Joh's Guide の森島丈洋さん。

この旅は、観光ではありませんでした。
「よく生きる」を標榜する会社で働いた仲間たちが、数年ぶり、ときには数十年ぶりに再会し、島に問われ、自分に問い直す——そんな2泊3日でした。


Day1 問いをひらく日・豊島

家浦港に集合した一行が最初に向かったのは、アートでも絶景でもなく、豊島の産業廃棄物の不法投棄跡地でした。
住民運動の中心を担ってきた石井亨さんの案内で、この島が背負ってきた歴史と、住民たちが自分たちの手で島を取り戻してきた道のりを聞きました。

「歴史を知る・学ぶ意味を、突き付けられた思いがした」

参加後アンケートより(田上ゆかりさん)

横尾館をめぐったあと、夕暮れの宿では、福武財団で瀬戸内の島々を担当してきた岩下さんによる「なぜベネッセアートサイト直島は生まれたか」のレクチャー。福武總一郎さんの言葉が、次々と参加者の胸に刺さっていきます。

「自然こそが人間にとって最高の教師」
「在るものを活かし無いものを創る」
「経済は文化の僕(しもべ)」

レクチャーで紹介された、福武財団名誉理事長であり、ベネッセグループ名誉顧問の福武總一郎さんの言葉

夜は、机に置かれた全員の「笑顔の冊子」をたよりに、ひとりずつ自己紹介。それぞれの「その後」が語られました。現役19年目の参加者からは、こんな言葉も。

「私、ベネッセの社員だったんだろうか——そう問いたくて、先輩たちに話を聞いてもらいたくて、来ました」

参加者の自己紹介より
港での集合写真
快晴の港で、エスポワールパークのスタッフと

Day2 問いをひらく日・直島

2日目は直島へ。地中美術館、李禹煥美術館、家プロジェクト、そして直島新美術館。岩下さんのガイドで、作品の背景にある物語とともにアートを巡りました。

「一瞬自分を見つめ直した豊島美術館。どこか哀しげなオオカミ。見えない南寺。石井さん、森島さん、岩下さんの圧倒的な説明力。色々とフラッシュバックされて悩ましいです」

参加後アンケートより(大野さん)

宿に戻れば、島の食材づくしの夕食。タコと夏野菜のポン酢ジュレ、瀬戸内の刺身に小豆島の醤油。食卓では石井さんが豊島の歴史の続きを語り、参加者は自分の仕事や暮らしと島の物語を重ねていきました。

夜は、森島さんの月と星の島ツアーへ。翌朝歩く山からの夜景を見に、9名が車に乗り込みました。ほろ酔いの車内で誰からともなく生まれた合言葉は——「Work as Life」。

Day3 豊島の「生」に触れる日

最終日は朝6時台に出発して壇山へ。朝の光の中の瀬戸内海を見下ろし、宿に戻って朝食のあと、豊島美術館へ。「水が生まれるところから」一日が始まる美術館で、旅は静かに締めくくられました。

「島を後にするとき、最後の最後の最後まで手を振って見送ってくださった皆様の姿。故郷『のような』場所は、増やすことができるのだと心で理解した」

参加後アンケートより(田上ゆかりさん)

なお、第1弾では福武トレスも訪ね、この場所を立ち上げた福武美津子さんのお話を伺う時間もありました。


<その後の、よく生きる。> それは——

旅を終えて2週間。参加者に「<その後の、よく生きる。>というタイトルに、いま改めてどんな言葉を続けたいですか」と尋ねました。返ってきた答えの一部を、そのまま紹介します。

  • それは自分で自分に問い続けなければいけない。杉山亮介
  • 時間軸を考えて生きる。(焦らなくていいし、ゆっくりでいい、そんなすぐ結果は出ない)堀中(竹口)由美
  • あなたの人生を思い切り生き抜くこと。高木元子
  • 「私たち一人ひとりが、本当に満足して、幸せを感じ、最期を迎えるための生き方」かな?雫石健
  • 自分自身に素直になること。太田さん
  • 自分ごとを見極め、いま自分ができることをひとつずつ積み重ねること。大野さん
  • 仲間がいれば実現できること。田上ゆかり
  • ずっとつながっていく、ベネッセでのご縁とわたし田川佳織
  • それは、目の前の今日、それに続く明日をよく生きること。それだけをずっと忘れないこと。松田恭子
  • ベネッセから 離れて見える よく生きる。参加者
  • 「よく生きるって、どんなふうか?」を問い続ける、愛すべき日常のこと。参加者

旅のその後——動き出した人たち

アンケートには、「帰ってきてから始めたこと」もたくさん書かれていました。

会いたい人に、会いに行くことを決行した人。10年近く本の表紙を描いてもらったイラストレーターを訪ね、絵を買った人(米谷明子さん)。時間潰しのSNSをやめ、仲間との自主上映会を一歩進めた人(堀中由美さん)。美術館の年間会員になった人。石井さんの本を読み、豊島の話を周りに伝え始めた人。ツアーで再会した同期と、初めてプライベートで出かけた人。

「あの3日間があったので、(怒涛の一週間を)なんとか乗り切れました」

参加後アンケートより(太田さん)

旅は終わっても、旅が動かしたものは続いています。

世代の継承——島で出会った若い人たち

この旅には、もうひとつの物語がありました。宿を切り盛りする若いスタッフたち——こどもちゃれんじや進研ゼミ、赤ペン先生に育てられた世代——との出会いです。

2日目の夜、宿の若き運営責任者が自らの夢を語り、OBOGたちが本気で耳を傾け、本気で言葉を返す時間が、自然に生まれました。教育とは何を測るものなのか。英語力より大事なものは何か。「喋れないのに、なぜこいつとは仲良くなれる——その能力だけでいい」。場の結論のように、誰かがぽつりと言いました。

「友達が世界を救う」

宿の写真展示室での集合写真
エスポで働く島の写真家の写真

結びに

「一粒で二度も三度もおいしい、感動のツアーでした」

参加後アンケートより(米田幸さん)

「2週間経つのに、今も浸ってます。あの楽しかった時間があるから、毎日を頑張れる」

参加後アンケートより(高木元子さん)

発起人・事務局より——ご参加いただいたみなさん、三好さん、岩下さん、森島さん、豊島エスポワールパーク、海のレストランのみなさん、私たちを温かく迎えてくださった島民のみなさん、本当にありがとうございました。

そして、次の旅の企画が、すでに動き始めています。

海のレストランから望む、瀬戸内の海に沈む夕陽
参加者のほぼ全員が「忘れられない」と答えた、海のレストランから見える沈む夕陽